あ▶アーチ

[亜] (接頭)/(名)〘地〙 4:2, 5:2, 6:2, 7:4

 第6版までは、「亜熱帯」などの接頭辞としての亜(したがって見出しとしては「あ―」)と、「アジア(亜細亜)」の略記としての亜が、別の見出しになっていた。それぞれ一行項目である。第7版ではひとつにされたついでに、接頭辞のほうは、「亜塩素酸」のような化学用語としての用法がやや詳しめに書き足されていて、四行項目になった。

 

[×啞] (名)〔文〕4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 第4版の語釈では『(生まれつき)口がきけない・こと(人)』と書いていたところ、第6版から(生まれつき)を削除している。用例の方も、『盲聾唖の三重苦』としていたのを、第7版では「三重苦」を取り除いて『盲聾唖』のみとしている。ちなみに訓読みのほう(「おし」)を見てみると、第5版から『(差別的なことば)』という注意が加えられている。実態に即し、かつ差別語としての害を減じるように改稿されているものと見える。

 第5版では表記欄に「唖」のほうの字体も載せられているが、第6版ですぐに削除された。

「啞」というのはそもそもが常用外漢字なので、表記についての決まりが作られてこなかった。そのため、常用漢字の「亜」に合わせた略記体で書かれるようになったのが「唖」である。でもこういう、「比較的よく使われる常用外の漢字」って、ちゃんと字体が定まってないと、たとえばフォントによって別の字体になっちゃったりして、いらぬトラブルのもとだよね、ということで議論になった。それで平成12年(2000年)12月の国語審議会で、「啞」のほうが印刷標準字体と決められ、「唖」は簡易慣用字体として、要するに「使っても問題ない字だよ」とわざわざ名指しで言われる、という結論が出された(優柔不断といえば優柔不断だけど、むやみに用語用字を制限しないのはとりあえず良いことである)。三国第5版は2001年3月発行なので、ちょうどホットな話題として「唖」の方も載せたけど、第6版(2008年)では思い直して削ったようである。規範的なほうに振ったのか、単に使われてないと判断したのか、そのへんの経緯をお聞きしたいところである。

 

 (感)〔話〕7:4

、この項目は第7版が初出だ」というときの「あ」です。

 

 (終助) 7:3

「これまた第7版が初出だ」というときの「あ」です。

 

―ア (造語)〘地〙4:2, 5:2, 6:2, 7:3

 地名の略記としての造語成分で、①アジア、②アフリカ、③(日本)アルプスが挙げられている。第6版で分野表記〘地〙が書き加えられてるのと、なぜか③の用例が『南ア』から『北ア』に変えられている。②の用例も『南ア』なので、重複を避けたということだろうか。第7版で一行増えているのは、字詰めがすこし緩やかになったために二行でおさまらなくなったせいで、内容に変更はない。

 この使い方の「ア」を独立した見出しに立てているのは、他に「新明解国語辞典」ぐらいなので、「明解国語辞典」あるいは「三国」初期以来の特徴ある項目なのかもしれない(未確認)。最近では「アジア」も「アフリカ」もほぼ略さずに書かれるようになっているとはいえ、「東南ア」とあれば東南アジア、「南ア」とあれば南アフリカ共和国、ということが確かめられる国語辞典は三省堂のものだけ、というのはやや驚きである。逆に「南阿」が南アフリカのことだとわからない三国にも驚くけど(新明国だとわかる)。漢語の造語成分は基本よそに任せる、現代日本ストロングスタイル辞典ゆえの大胆な編集である。

 

ああ (副) 4:1, 5:3, 6:3, 7:6

 第4版では用例まで含めて堂々たる一行項目だったんだけど、第5版で『ああ言えばこう言う』という慣用句が加わって三行項目になり、第7版で『ああだこうだ』がさらに加わって、六行にまで増えてしまった。「ああいうことをしてるから、どんどん分厚くなるんだ」とか言われてそうである。

 

ああ (感) 4:2, 5:2, 6:2, 7:9

 第6版までは見出しの直後に表記[:嗚呼]があって、『何かに感じて出す声』としての意味だけを載せていたんだけど、第7版で大幅に増補されて「嗚呼」は意味区分①という扱いになり、さらに四種類もの用法が書き加えられて、九行も使う大きな項目になった。「ああ、こんなことばかりしてるから、どんどん分厚くなるんだ」とか言ってそうである。いち読者としては面白いから歓迎するのみだけど、出版社には頭痛のタネと推察します。

 

あーあ (感)〔話〕6:4, 7:4

 第6版での初出時は、見出しが『あああ』で、続く表記欄に『[あーあ]』と書いてある、というかたちになってたんだけど、第7版では見出しが『あーあ』になって、文末に別表記として『あぁあ』が書き加えられた。第6版では外来語じゃない限り見出しに長音符を使わない、というルールでもあったんだろうか。ちょっと他の例が思いつかないので、読み進めて確かめるしかない。

 

ああいう (連体) 4:1, 5:1, 6:1, 7:1

 まったく変わってない項目、その1。

 

アーカイブ (名) (5:3), 6:6, 7:6

 コンピューター用語としての用法が①で、より旧式(本来のというか)な、資料などの保管所などの意味は、②のほうに『アーカイブス』という追い込み見出しを立てて書かれている。で、その『アーカイブス』の文末に、表記ゆれとして『アーカイブズ』と書かれているんだけど、実は第5版には『アーカイブズ』を見出し語として、②に相当する内容が書かれていた。と、いうことで、カッコ付きで第5版に三行、と書いているわけである。

 英語からの音訳でありがちな間違いとして「アーカイブズ」の形が先に普及していて、第6版が出るまでの間に「アーカイブスのほうが正しいよね」という人が増えた、という時代の変化が見て取れる。

 

アーガイル (名)〘服〙4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 もともと『ひし形の格子模様(コウシモヨウ)』とふりがなされていたのが、第7版では『格子(コウシ)模様』に変えられて三文字減った。行数の節約にはなってないけど。

 いっそふりがなを削って一行項目にしたい気持ちはやまやまだが、『格子』の意味がわからないうえに「カクシ」と誤読してしまって「コウシ」が引けない、という悲劇を回避するためには致し方ないところである……というのは私の妄想です。

 

アーキテクチャ(ー) (名) 7:3

 語釈を読む限り、IT用語として日本語に定着したという判断のようである。「建築」の訳語としてではない。「アーキテクト」はまだ頻度が低いかな。

 

アーケード (名) 4:4, 5:4, 6:4, 7:3

 ついに新しい版で分量の減ってる項目が現れた……んだけど、実はイラスト(商店街のアーケード)がなくなっただけで、本文は変わっていません。イラストがなくなるのは大ごとなので、「まったく変わってない項目」には入れない。

 

アース (名)/(名・自サ)〘理〙4:4, 5:4, 6:5, 7:4

 第5版までは「洗濯機をアースする」の意味だけが載っていたんだけど、第6版から『地球。大地。』という意味が[一]として加えられ、電気のアースは[二]に追いやられた。第7版で行数が減っているのは、『アーケード』のイラストが削除された影響です。

 [一]のアースを優先的な意味区分に立てているのは珍しいやり方で、「三国」以外の辞典では、「earth=地球・大地」のように元の英単語の意味として文末に注記されているか、意味区分[二]としているかである。いまや『アースカラー』とかのアースのほうが接地のアースより一般的、と観察しているのは、確かに平成の語感に合う。これぞ「三国」の面目躍如である。例えば「アーススキャナー」という番組名を見て、「接地線が必要なとこにちゃんと設置されているか抜き打ちチェックする番組かな」とか思う人がいたら、よほどの変人だと思う。

 実は「角川」と「新潮」も意味区分①に『地球。大地。』を載せているんだけど、これはどちらかというと、語の基本的な意味を先に書くという方針によるものである。「三国」はご存知のように現代語でもっとも一般的な意味を最初に載せる主義なので、日本語における「アース」の意味は、50年くらいかけて電気のアースという工学的な意味から、より原義に近い地球のアースに先祖返りしたわけである。

 

アーチ (名) 4:11, 5:6, 6:6, 7:6

 慣用句として『アーチをかける』というのが載せられていて、これは『ホームランを打つ』ことだと語釈されているんだけど、第5版以前は『(スタンドに入る)ホームランを打つ』と、ちょっとだけ詳しく書かれていた。ランニングホームランは『アーチ』として認められないことが明記されていたわけである。平成初期にあっては、野球とは今よりもホットかつデリケートな話題だった。

 第4版だけ11行もあるけど、これはイラスト(会場入口の飾りとしてのアーチ)がなくなった影響によるもの。『アーケード』にもイラストがあったばかりなのに、大盤振る舞いしすぎじゃないかとも思うけど、別に賑やかしのために載せてるわけでもないし、結果的として本文の1ページ目にトピアリーの入口アーチが描かれているのは、なかなか良いものである。なくなってしまって残念。