アーチェリー▶アール

アーチェリー (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 第7版では、体育競技の一つであることが明示的にわかるように改稿されている一方で、『日本の弓より小さい』という説明が省かれた。

 

アーティスト (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:4

 意味区分をして、『①芸術家』『②演奏家』の二つが書かれていることではどの版も同じだが、第6版で②に『歌手をふくめることもある』と注記されたのに続き、第7版では『歌手。演奏家。』としていて、単に歌手を示す語としての用法が最も一般的とみなすようになったことがわかる。

 ちなみに第5版までは主見出しが『アーチスト』で、文末の注記に「アーティスト」が書かれていたけど、第6版で逆転した。

 

アーティチョーク (名)〘植〙4:4, 5:4, 6:6, 7:4

 第5版までは『和名チョウセンアザミ。』までだったんだけど、第6版ではフランス語由来の別表記『アルティショ』『アーティショー』が書き加えられた。行数では第7版でもとに戻っているけど、これはイラスト(アーティチョーク)の配置との兼ね合いによるもので、本文の変更はなし。

 

アート (名) 4:5, 5:10, 6:9, 7:8

 第4版では追い込み項目が『アートディレクター』だけだったんだけど、第5版で『アート紙』『アートフラワー』が加えられた。その後行数が減っているのは、イラスト(アーティチョーク)の配置との兼ね合いによるものです。第7版ではふりがながひとつ削られて、8行に収められた。

 

アーバン (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 まったく変わってない項目、その2。

 

アーベント (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 内容としては全く変わってないんだけど、第6版から何故か前の行の余白に折り返す処理をやめてしまって、一行の損になっている。『アーバン』の二行目の余白はもちろん変わってないので、ただ損してるだけみたいに見えるけど、なにか他の箇所との兼ね合いがあるのかもしれない。

 

アーム (名) 4:3, 5:3, 6:4, 7:3

 第5版までは、『①うで』『②受話器』『③ミシンの、本体の部分』という三つの意味区分がされていたんだけど、②と③は第6版で『②うで状の部分』にまとめられた。「うで状の部分」の例として、受話器やミシンの本体部分を挙げて説明している。家庭でミシンが使われなくなったことを反映した変化と思われる。

 ところで、『①うで』の用例は、第5版までは『アームバッグ』だけが書かれていて、第6版で『アームチェア』『アームレスリング』が書き足され、第7版では『アームバッグ』が削られている。ここでいう『アームバッグ』というのは、ちょっと長めの(持ち手/ひも/チェーン)がついていて、うでにかけて持ち歩くハンドバッグのことである。そういえばあれって廃れたよねという感じが確かにする。持ってる人がいても、「ハンドバッグ」としか呼ばないんじゃないかと思う。いま「アームバッグ」と言われたら、ジョギング中に腕に巻いておく小さなポーチのことを思い浮かべる人のほうが多いんじゃないか。そうでもないか。

 ついでにいうと、大抵の辞書で「うで」の意味の例が「アームチェア」、「うで状の部分」の意味の例が「レコードプレイヤーのアーム」になっているところ、アームバッグだのミシンだのを持ってくるあたり、婦人むけの読み物からも抜かりなく用例を採集している見坊先生のお姿が偲ばれて楽しい。

 

アーメン (感)〘宗〙 4:3, 5:3, 6:3, 7:3

 おおむね変更がないんだけど、第6版まで品詞が(感・名)になってたのが、第7版で名詞扱いをやめ、分野表記〘宗〙がつけられた。

 他の辞典でもおおむね感動詞としてしか扱っていないし、語感からいってもそりゃそうだろうと思うので、「三国」が第7版でやっと(名)を削ったというのは、やや奇異なことに思える。他に「アーメン」を名詞と記載している辞書は「辞海」と「新選」である。「辞海」はもちろん昭和初期の辞書だし、「新選」は新語や教科語の増補はマメでも、昔からある項目の内容に関してはやや保守的、という傾向のある辞書なので、どうも昭和初期ごろまでは「アーメン」の名詞的用法が行われていた、ということと思われる。「三国」は昔から俗語・俗用に寛容なので、こういうのも当然採る。

 ちょっと暗い推論だけど、わざわざ「アーメン」などと呼ぶ対象がいた、ということは、恐らくキリスト教徒に対して批判的・揶揄的に言及するときに使っていたのが「アーメン」の名詞的用法なんだろう……と、いったところで「新潮現代国語辞典」を引いてみたら、そのものズバリの意味区分が、バッチリ引用例文付きで載っていた(引用元は藤村「桜の実の熟する時」)。さすが「新潮現」。

 ともあれ、このような経緯のある「アーメン」の名詞的用法が「三国」第7版から削られているのは、日本語が少しきれいになったことの一つの証拠といえる。

 

アーモンド (名)〘植物〙4:2, 5:2, 6:3, 7:3

 第6版でやや詳しい語釈に書き換えられているが、全体的には「ああ、あの食べてる部分はタネなんだ」と思える程度の語釈で変わりはない。用例には『アーモンドチョコレート』がずっと挙げられていたんだけど、第7版で『アーモンドアイ』が加えられた。たぶん新語として拾ったけどあまり一般的でもないので、とりあえず『アーモンド』の語釈に(行数を増やさないので)入れとこう、という経緯によるものと推察する。

 他の辞書を見ると、アーモンドの別表記・別名として、アマンド、アメンドウ、巴旦杏、扁桃の中からいくつか(「集英国」や中型辞典には全て)載っているんだけど、「三国」にはひとつも載っていない。ほぼ死語状態の昔の音訳(アマンド、アメンドウ)とか、歳時記レベルの語彙の巴旦杏はともかくとして、「扁桃」ぐらいは載ってもいいのになと一瞬思ったけど、確かに「アーモンド」から「扁桃」を知れるようにしておくのは、やや雑学目的の記述という気がするし、「三国」はそういうのをストイックに禁じる辞書なんである。ちなみに『へんとう[扁桃]』の項目には『(=アーモンド)』という記載があります。

 

アール[R] (名) 7:23

 第7版で初めて、23行という破格のボリュームで登場した驚くべき見出し……と、一見思ってしまうのだけど、よくよく見ると、その記述の一部は第6版から載っている、というちょっと厄介なやつ。曲線の程度を表す『アール[R]』を新たに見出しに立てたことで、追い込み項目のルールによって、もともと載ってた「R」を頭文字に持つ見出し語が『アール[R]』に吸収されて生まれた、合成獣のような項目である。

 どういうことかというと、第7版の『アール[R]』は曲線半径のRという意味のあとに、『アールアンドビー[R&B]』『アールエイチいんし[Rh因子]』『アールエヌエー[RNA]』『アールシー[RC]』『アールしてい[R指定]』『アールディーディー[RDD]』『アールブイ[RV]』という7つの追い込み項目が並べられているんだけど、そのうち4つ(「Rh因子」「RNA」「R指定」「RV」)は第6版では独立した見出しだった。今回始めて『アール[R]』という見出しが立ったので、「R」を頭文字に持つ見出し語たちは、「複合語の先頭の構成要素が3音以上の場合、主見出しの下に追い込む」というルールによって、見出し語としての独立を奪われ、『アール[R]』の支配下に置かれることになった。ついでに「R&B」「RC」「RDD」も新たに収録されて、『アール[R]』は初出ながら実に7語もの追い込み見出しを支配する巨大見出しとして「三国」第7版に登場した。こういうのを見出し語における帝国主義という……ええい、わかりにくいな。図にするか。

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 と、いうわけで、のちに追い込んでまとめられる項目も含めて行数をカウントするなら、4:4, 5:6, 6:15, 7:23 ということになる。こういう大規模な紙面の変更が見られることについては、珍しくて嬉しいんだけど、個人的にはこの処理に納得いってないところがある。

 というのも、「R」単体には曲線半径を示すもの、という意味しか与えられていないのに、その下部項目として、曲線半径とは関係のない意味の「R」をもつ語がずらずらと並んでいると、ぱっと見たときに混乱するからである。「アート」の下部項目に「アート紙」「アートディレクター」「アートフラワー」が並んでいるのは、どれも「アート」のもとの意味に関係がある。同じ構造の大きな項目があると、意味的にも同じ構造をとっているものとつい思ってしまうのだ。「Rh因子」に至っては、rhesus monkey(アカゲザル)から頭二文字を使ったものなので、「R」と「h」を分割して造語成分と見なすこと自体にいささかの無理があると思う。

 もちろん、『この辞書のきまり』をよく読めば、追い込み項目は純粋に音の数で決まるのであって、意味的なつながりが必ずあるわけではない、と納得できるし、ルールの徹底が辞書の生命線だというのも理解できる。日本語の文章中に「Rh」と出てきたら、とりあえず文字ごとにバラして辞書を引くだろうとも思う。ただ単に、結果として直感的には誤解を招くかたちになってる、と思うだけです。

 じゃあどうなってれば良いんだよ、と考えると、簡単な解決策としては、「R」の意味に「①アルファベット(ラテン文字)の18番目の文字」とか書いておいて、曲線半径と関係のない「R」をもつ語が続いても意味的に混乱を来さないようにするのが良いのではあるまいか。ただしそれをやると、他のアルファベットにもいちいち「何番目」を書かないといけなくなるので、けっこう紙幅を食うからやりたくないのもわかる……と、思いながら、試しに『エー[A]』を見に行ってみると、『①アルファベットの第一文字』と書いてある。あれ。書いてるのかよ。と、思いながら、『ビー[B]』を見に行ってみると、『①アルファベットの第二文字』と書いてある……が、隣の『ピー[P]』には何番目とは書いていない。と、いうことは、「ABCD」くらいまでは、昔の「甲乙丙丁」の使い方で日本語の中でも使われることがあるから、いちいち何番目と書いてあるのかな? と、思いながら、『シー[C]』を見に行ったら、書いてなかった。①にはセルシウスのことが書いてあった。『③等級の三番め』というのはあったけど。「ディー[D]」なんか見出しにすらなってなかった。ということで、「アルファベットの何番目」をいちいち書き足したら、24行くらいは増えるはずである。これはけっこう大きい。日本語の辞典なのにいちいち載せるのかという問題もあるし。まぁ載せてる辞書もあるけど……という比較はここでは控える。手間がかかるので。

 ちなみに「R」以外に同じような追い込み処理が起こりうる(つまり読みが3音以上の)アルファベットには、他に「H」「W」「X」「Z」があるわけだけど、このうち単体で見出しになってない「Z」以外は、第4版から追い込み項目を持っていた、とだけ、今は述べるにとどめる。キリがないので。

 

アールエイチいんし[Rh因子] (名)

 この項目、第5版までは母子間で型が合わないと死産になることがある、という情報だけが載っていたんだけど、第6版ではもう少し説明が丁寧になり、輸血のときに問題になる、ということを優先して書いている。輸血の話題のほうが一般的と判断するのが今なら普通だと思うので、この語が見出しになった時点では、妊娠についての記事の中から採られたものと思われる。婦人向けの読み物からも抜かりなく用例を採集している見坊先生のお姿が偲ばれて楽しい……いや、婦人向けの読み物から拾ったとは限らないけど(アームバッグも)。

 ところで、上の図で気づいた人もいるかもしれないけど、第7版から「H」の読みは原則的に「エッチ」じゃなくて「エイチ」だということになりました。第6版までは『アールエッチいんし』という見出しだった。確かに真面目な文脈では、どんな「H」であっても「エッチ」と読むのがはばかられる雰囲気はある。「新明国」は第4版(1989年発行)で既に「エイチ」になっているので、「三国」が2014年にもなってやっと変えてるのは遅いぐらいだと思う。ちなみに現行の最新版で「エッチ」を採用しているのは「集英国」のみです。だからどうだということでもないんだけど。これ以上の「エッチ」「エイチ」問題は、より網羅的な辞書コレクションを持つしかるべき人士に追求してもらいたい。私の手には余る。なにしろうちには第3版以前の「新明国」もないし……。買うかな……。

 

アール (名)

 面積の単位のアール。まったく変わってない項目、その3。