アイアール▶アイオーシー

アイアール[IR] (名) 6:3, 7:3

 第6版で初出。いまのところinvestor relations(投資家向け広報)の略語としてのみの掲載なので、ちかごろ議論の喧しいintegrated resort(統合型リゾート)が次の版で載るかどうか、注目の見出し。ちなみに「集英国」と「岩国」ではinformation retrieval(情報検索)だけを載せている。

 

アイアイ (名)〘動物〙6:2, 7:2

 例のおさるさん。「ユビザル」という異称があって、第6版ではカタカナで書いてあったんだけど、第7版では『ゆびざる(指猿)』と漢字表記つきのひらがなにされている。なぜだ。「ユビザル」とだけ書いてあったら、「jubizal」とか綴る外国語だと誤解される、と思ったとか? そんなわけないか。

 ところで、他の国語辞典だと、たいてい猿の「アイアイ」はなくて、「あいあい[藹藹]」が見出しに立っている。「和気藹々」ならともかく、「藹藹」を独立して使うことは、現代日本語ではほとんどあるまい、という「三国」の判断が見て取れる……んだけど、じゃあ猿の「アイアイ」があの歌以外で一般的な日本語に出てくるのかと言うと、それはそれで疑問である。

 

あいあいがさ[相合い傘] (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 まったく変わってない項目、その7。語釈中『男女がいっしょに…』となっていることにかすかな引っ掛かりを覚える。これではせっかく書き換えた「愛②」の定義とそぐわないのではないか、それとも、恋愛感情とは関係なく、男女がともに傘に入ることだけを「相合い傘」と呼ぶとでもいうのか……と、いうのは、さすがに意地悪な指摘かな。

 

アイアン (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 まったく変わってない項目、その8。鉄のことではなくて、金属製のヘッドをもつゴルフクラブのこと。「角川」「新潮」のような古めの辞書だと、原義である「鉄」というのを①に載せているんだけど、こと最近の小型国語辞典にあっては、「アイアン」とはゴルフクラブのことである。

 

あいいく[愛育] (名) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 記述に変更はないんだけど、なぜか第5版で前の行への折返しをやめてしまっていて、一行損している。

 

あいいれない[相(▷容れない)] (連) 4:3, 5:3, 6:4, 7:3

 これまた地味な改稿が続けられている、なかなか油断ならない見出しである。各版の定義を表に示す。

表 「三省堂国語辞典」における「相容れない」の定義の変遷

f:id:teebeetee:20181105220802j:plain

 第4版の定義①では、『存在をみとめない』というなかなか剣呑なものだったの対して、第5版では『立場をみとめない』というややマイルドなものに変更され、ついでに用例も書き加えられた(表には載せてないけど)。

 第6版での本文の変更はなかったが、第5版まで(形)だった品詞表記が(連)に改められた。それぞれ形容詞と連語ということだけど、連語というカテゴリ自体は第4版にもあるので、第6版で新設されて移動したわけではなく、単なる見直し。

 そして第7版では、内容が大きく動いている。旧版の①と②のような、人(相手)同士を対象にしている「相容れない」は①にまとめてしまって、②のほうには、ことがら同士の「相容れない」を新たに意味分類に立てている。定義文からは、人ではなくことがら同士の「相容れない」を指しているのがわかりにくいけど(「両立する」は、人について言うときにはあまり使わないので、一応察しうる)、②の用例として『憲法の精神と相容れない制度』というのを載せていることから明らかである。

 ただ、この事をもって、第4版の頃には「相容れない」がもっぱら人の間に使うものだったが、第7版の出る頃までにものごとに使われるように変化してきた、と言いうるのか……と考えると、どうもそうではないんじゃないか、と思わざるを得ない。

 第5版では用例が書き加えられていると前に述べたが、定義①(おたがいに相手の立場をみとめない)の用例は『相容れない主張』というものだった。これは確かに一般的な使われ方だが、厳密に考えると、定義と用例がわずかに噛み合っていない。「主張」自体は人ではないので、お互いを「相手」とすることはないからである。「主張」を被修飾語にとるのであれば、「両立しないことがら」であることを(も)表現する語として、「相容れない」の定義を書く必要がある。それで第7版の定義②が書かれた。つまり、旧版の不備を補うための改稿であって、「相容れない」自体の使われ方の変化ではない、というのが、私の見立てである。

 見ている部分がいよいよ細かすぎて、書いてる自分でも「何言ってんだこいつ」という気がだんだんしてくる。ちょっと休憩しよう。

 

あいいん[哀韻] (名)〔文〕4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 まったく変わってない項目、その9。

 

あいいん[愛飲] (名・他サ) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 第6版までは〔文〕という記載があったんだけど、第7版では外された。確かに、「愛飲」は今ではわりと日常語という気がする。

 ついでに、愛飲の対象として挙げられている例も、『酒・ビールなど』から『酒・コーヒーなど』に変更されている。いまの語感だと、「いやいや、ビールも酒じゃん」って思うので、納得の改稿である。平成前半くらいまでは、ビールとは他の酒と区別して言及するに値する特権的な飲み物だったのだ……ということなのか、あるいは「酒」と言えば日本酒を指しているのであって、アルコール飲料一般を言っているとは思われなかったのか、そのへんの細かいニュアンスまでは、ちょっと私には汲み取れない。

 

あいうち[相打ち・相討ち] (名) 5:3, 6:3, 7:3

 第5版での初出以来、変更なし。

 

アイエイチ[IH] (名) (6:3), 7:3

 induction heatingのIH。第7版で初出……じゃなかった。第6版では「アイエッチ」で載ってます。

 

アイエーイーエー[IAEA] (名) 5:3, 6:4, 7:4

 第5版の初出時には、「国際原子力機関。」という日本語での名称を書いて項目が終わっていたが、第6版ではさらにもう一行費やして、機関の活動目的が書き足されている。

 

†あいえき[愛液] (名)〔俗〕4:2, 5:2, 6:2

 みんな大好きエロ見出し……なんだけど、残念ながら第7版で脱落。あえてここに転記はしないけど、語釈も今の目で見ると不穏当なものになっています。「濡れてるからOK」じゃねぇわボケ!!!!という文脈で。したがって、残念ではなく、妥当な見直しだったと言うべきでしょう。グッジョブ「三国7」。

 

アイエスオー[ISO] (名) 5:5, 6:5, 7:5

 みんな大好きISO。第5版での初出以来変更なし。

 

アイエスビーエヌ[ISBN] (名) 7:4

「三国7」小型版のISBNは、978-4-385-13927-2です。

 

†アイエスディーエヌ[ISDN] (名) 5:4, 6:4

 第5版で初出、第7版で脱落。ついに平成の間に生まれて消えた見出しを見つけてしまった……。ちなみに第5版と第6版の本文は微妙に変えられているんだけど、えーと、説明しません。

 

アイエムエフ[IMF] (名) 4:3, 5:3, 6:3, 7:3

 まったく変わってない項目、その10。

 

アイエルオー[ILO] (名) 4:4, 5:4, 6:4, 7:4

 本文中「労働条件や社会保障について……」と書いているところ、第6版までは「保障(ホショウ)」とふりがなを付けてあったのが、外されている。どうしてそうしたのかは不明。行の節約でもないし、ふりがなを付ける基準に変更があったのかな。

 

あいえん[愛煙] (名・他サ) 4:2, 5:2, 6:2, 7:2

 第7版で〔文〕が外れている。「愛飲」もそうだったけど、第7版では文章語とする指定が外された見出しが多い。おそらくインターネットの普及によって、文章語と日常語の境目が大きく動いたと言うか、曖昧になったことを反映してのことと思われる。

 ところで、品詞に「他サ」とあるけど、「愛飲する」みたいに「愛煙する」って言うかな? 例えば好きなタバコの銘柄を言うときにも「愛飲する」を使うと思うし、「愛煙する」って私は聞いたことないけど……。でも「三国」のことなので、用例はちゃんとあるんだろう。ことほどさように、私の「三国」に対する信頼は厚い。

 

あいえんきえん[合縁奇縁] (名) 4:3, 5:3, 6:3, 7:3

 本文に変化はないが、記号の使い方の変更が観察できる項目。『人は偶然のきっかけで、したしい関係・夫婦になるものだ、ということ』というのが第5版までの定義文なんだけど、第6版は『したしい関係(夫婦)』に変更されており、第7版では『〈したしい関係/夫婦〉』になっている。どれも意味としては並立(したしい関係になるものだ or 夫婦になるものだ)である。でもこの第6版の書き方だと、したしい関係=夫婦に限定するものと誤読しかねないように思う。

 と、言っても、これは前後の版の表記と並べて比べるからそう思うだけで、第6版の「この辞書の使い方」をちゃんと読んでいれば、「(夫婦)」を見ても即座にこれは並立だな、と思えるようになっている。語釈を読んでいて引っかかるものがあったら、念のため記号の意味を取り違えていないか確認するのが、正しい辞書しぐさです。

 ちなみに、「合縁縁」とも書かれることが、他の辞典を読むとわかるんだけど、「三国」は伝統的にそっちの表記を採っていないようである。逆に「新明国」はこの点さらに念入りで、文末の[表記]欄にて、「合縁」が「相縁」とも「愛縁」とも書かれること、「奇縁」が「機縁」とも書かれることを明記している。

「奇縁」と「機縁」の意味の違い(どちらも見出し語である)を考えると、「あいえんきえん」の意味では「奇縁」が正解のような気もする。しかし、この語がどういうときに使われるかを考えると(披露宴のあいさつとか電報とか)、まぁ好きなように当て字して意味を膨らませて、うまいこと言えば良いんじゃないの、という気持ちにはなる。

 

あいおい[相生い] (名) 5:3, 5:3, 7:3

 第5版での初出以来変更なし。

 

アイオーシー[IOC] (名) 4:3, 5:3, 6:3, 7:2

 第6版までは『国際オリンピック委員会。』の「会。」だけが三行目になってしまっていたんだけど、第7版では字詰めを頑張って、内容据え置きで二行項目に変えることができた。よかった。